【老人ホーム死亡事件】「暴力はダメ」だけど…介護士を責める前に“この現実”を直視しろ


2025年5月、佐賀市の老人ホームで起きた衝撃の事件――

介護士・下津浦弘平容疑者(35歳)が、入所者である87歳の男性・柳瀬忠雄さんに暴行を加え、外傷性腎破裂や肋骨の骨折などの重傷を負わせ、後に柳瀬忠雄さんが死亡したというニュースが報じられました。


確かに暴力は許されるものではありません。介護士である以上、その行為はプロフェッショナルとしての一線を越えています。

…しかし、ネット上では単なる「加害者バッシング」では終わらない、介護士の“現場の地獄”に対する同情と怒りの声があふれています。


「またか」と思ったあなた。

それこそが、日本の介護が崩壊に向かっている証拠です。


◆ 事件の背景にある「介護地獄」:責める前に、想像してみてくれ

今回の事件を報じるニュースには、あくまで「介護士の暴力」「死亡事件」といった事実が強調されていますが、その背後にある地獄のような職場環境については触れられていません。

Twitter(X)では以下のような投稿が多数ありました

> 「介護士の報酬が十分に上がらず質を低くし続けた結果、死亡事件や暴行事件が増えてるね。経営者や政治家の怠慢も大きい」

「毎日、赤の他人から○意が湧くほどの暴言を浴びせられる上に、薄給重労働…ロボットに任せるしかないわ」

厚生労働省のデータ(2023年)によれば、介護士の平均月収はたったの約25万円

離職率は約20%と異常に高く、その主因は「賃金の低さ」と「精神的ストレス」。

そりゃそうだろう。

「人を支える」仕事なのに、「人に潰される」構造になっているのだから。


◆ 利用者からの暴言・暴力は“日常茶飯事”という現実

綺麗ごとは言いません。

介護現場では、“利用者様”と呼ばれる高齢者からの暴言・暴力が横行しています。

公益財団法人 介護労働安定センターの調査(2023年)では、介護士の25%以上が「身体的・精神的暴力を受けた経験がある」と回答。


実際のリプライでもこんな投稿がありました

> 「オレ様の年金で稼がせてやってる、みたいな言動を平気で職員に浴びせる人がいる。現場はガラス越しにした方がいいって思うくらい」

これが現実です。

仕事だから我慢しろ? プロだから耐えろ? ふざけるなと言いたい。

人間相手の“介護”は、感情の消耗戦です。

暴言、セクハラ、無理難題。尊敬のカケラもない態度で「ありがとう」もないまま、それでも笑顔で介護を続ける。

それを毎日やれと言われる側の気持ちを、あなたは想像できますか?


◆「暴力はダメ」その通り。でも、その一言で“すべてを断罪”できるのか?

繰り返します。

暴力は絶対にダメ。人として、介護士として、超えてはいけない一線。

でも、それだけで済ませていいのか?

下津浦容疑者は“人として失格”と言い切る前に、「なぜそこまで追い詰められたのか?」を問うべきではないか?

暴言、長時間労働、職場の人手不足、家庭のストレス。

介護士は“人間であってロボットではない”という当たり前の前提が、社会から忘れ去られている。

> 「こんなことで人生を棒に振るのは勿体ない。」

というリプライもありましたが、日本社会が“介護職をここまで追い込んでいる”という現実を見なければ、また同じことが繰り返されるでしょう。


◆「命を守る職業」で、命を削られる現実

本来、介護職は“人の尊厳を支える尊い仕事”であるはずです。

けれど、現実はどうでしょうか?

月25万円の手取りで、夜勤も当たり前。

5人で10人以上の高齢者を相手にする「人手不足」。

一方通行の感謝なき労働。

尊大な高齢者からの暴言、時に暴力。

それを訴えても、施設は「ハイハイ」で終わらせる。

そろそろ限界です。

「介護士だから我慢しろ」の精神論では、もう誰もこの仕事を続けられません。


◆ 政府と社会がすべきこと:「我慢してね」じゃなく、「守る制度」を

ではどうすればいいのか?


1. 介護士の処遇改善:最低月給30万円+夜勤手当・ストレス手当の支給を義務化

2. 入所者によるハラスメントを記録・報告し、処分できる仕組みの導入

3. 現場に介護ロボット・AI・外国人スタッフの導入促進(現在普及率は10%程度と低すぎる)

4. 24時間体制の精神ケア・カウンセリング窓口の設置

さらに、メディアが「介護士=加害者」と一方的に描かないことも重要です。

事件が起きたとき、「なぜ?」の背景を掘り下げなければ、表面的な解決にしかなりません。


◆ 「また介護士がやった」じゃない。「また社会が追い込んだ」のだ

今回の佐賀の事件を通じて、私たちが問うべきは、

「この国の介護は“人が壊れる”まで頼る仕組みになっていないか?」

ということです。

暴力を容認してはなりません。

でも、それを引き起こす“環境”にこそ、鋭くメスを入れる必要があります。

介護士も一人の人間なのです。

誰かが守らなければ、彼らは声もあげられず、また一人…静かに壊れていくのです。




◆ 最後に:あなたが「将来、介護を受ける立場」になる前に…

今、この記事を読んでいるあなたも、いずれ“介護される側”になる可能性があります。

そのとき、あなたを支えてくれる介護士が疲れきっていたら?

やりがいも報酬もない中、感情を押し殺していたら?

それでも「ありがとう」と言える自信がありますか?

この国がこのまま「介護職の使い捨て」を続けるなら、介護崩壊は、あなたの未来にも確実に直結します。

いま、変えるべきです。

「介護職=誰でもできる」ではない。

「介護職=命を預かる専門職」です。

暴力は、許されない。

でも、介護士を一方的に断罪して終わらせてはならない。

この事件をきっかけに、介護の未来を、真剣に考えるときが来たと私は思います。

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